第32回 抗炎症の仕組みの話(2015年9月 No.32より)

【勘違いされることも多いLPSの働き。実は炎症抑制作用の証明されている優れた素材だと言うことが証明されています。】

皆さん。ひげ博士じゃ。御存知のように、LPSは教科書を見ても、論文を見ても、激しく炎症を誘導すると書かれておるのう。ところが、実際には、LPSを炎症部位に使い炎症を鎮めているのは御存知の通りじゃ。このLPSの効果に首をかしげる研究者は多い。そこで、LPSの抗炎症の仕組みについて全貌はわかっていないが、大いに参考になる研究を紹介しよう。
LPSの炎症抑制には、制御性T細胞 (Treg)という免疫寛容を誘導する細胞が関わっておる。このTregは炎症抑制作用が強いことが知られているのじゃが、他のヘルパーT細胞と異なり、トル様受容体(TLR)-4を持っていてLPSと反応する(文献1)。そうなると、Tregは、実は自然免疫細胞として働いておるのじゃ。TregはLPS刺激によって活性化・増殖し、IL-10という炎症を抑制するサイトカインを産生し、好中球やマクロファージを抗炎症型に変えるというのじゃ(文献2)。
教科書に書かれているLPSが炎症をおこすのは、細菌の侵入の初期の応答の事なのじゃ。一方で、起こった炎症を消火して修復に向かう引き金もLPSの重要な役割ということじゃ。教科書では、LPSについて炎症の引き金しか目を向けておらんのじゃのう。

文献1: I. Caramalho, et al., J. Exp. Med., 197: 403-411 (2003).
文献2: N. Lewkowicz, et al. Mucosal Immunology, July 2015. Doi:10.1038/mi.2015.66

出典:特定非営利活動法人環瀬戸内自然免疫ネットワーク発行ニュースレター

ひげ博士

 

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